アシスタントを、WordPress の管理画面の外——ふつうの Web ページに置けるようにしたい。いま、その仕組みを作っています。
最初に決めたのは、機能ではなく、守りの形——セキュリティでした。今日はその話なんですが、その前に、そもそも何をそんなに外へ出したいのか、から話させてください。
外に出したいもの=AIアシスタント
アクセス解析あるある、だと思うんですが——画面を開いて、グラフを眺めて、なるほど、と思って、そっと閉じる。数字は見た。傾向も、たぶん分かった。でも、何をすればいいかは分からないまま。
数字は嘘をつきません。ただ、何も言ってもくれないんですよね。「セッション数 3,052」は、それ自体では励ましも警告もしてくれない。数字と「次の一手」のあいだには、いつも距離があります。
QA の管理画面にある「AIアシスタント」というメニューは、その距離を縮めるための道具です。開くと、こういう画面が動きます。

やっていることは、数字を言葉に置き換えることです。グラフの山と谷を読み解く代わりに、「検索から来た人が増えています。読まれたのはこの3ページです」と言ってもらう。ここまで言葉になっていれば、数字が得意じゃなくても、次の一歩を考えはじめられます。
私が気に入っているのは、言葉だけじゃないところです。必要に応じて、グラフや図も出してくる。つまり言語化と視覚化の両方で、数字の羅列を「分かる形」にしてくれる。
そして、この感じは文章でいくら説明しても半分も伝わらないと思っています。触ってみるのがいちばん早い。ところが、いまこの画面は管理画面の中にいて、ログインした人しか触れません。触れば伝わる道具なのに、触れる場所が中にしかない。もったいない。だから外に置きたい——というのが、いま作っているものです。
何が怖いのか
ここからは、家にたとえて話します。対応はこうです。サーバーは、家。アクセスデータやヒートマップの記録は、家の中の財産。そして、管理画面がデータを取りに行く出入り口が玄関で、ここには「WordPress にログインした人しか通れない」という鍵がかかっています。

アシスタントの画面も、裏側ではこの玄関を通ってデータを受け取っています。だから、外のページにアシスタントを置くいちばん手っ取り早い方法は、玄関の鍵を外してしまうことです。ログインなしでも通れるようにすれば、デモページからのお願いにも答えられる。実際、それで動きます。
でも、鍵のない玄関を通れるのは、デモページだけではありません。玄関が開いていることは外から分かるので、世界中の誰でも入れます。そして玄関の先には、見せたいデモの1部屋だけでなく、アクセスデータの部屋も、ヒートマップの部屋も、全部ある。

デモを1つ見せるための代償として、家じゅうを開け放すことになる——だからこの案は、最初に捨てました。
答え=「狭い窓」を1つだけ作る
選んだのは、玄関は施錠したまま、デモ専用の小さな窓を別に1本だけ作るという設計です。

窓のルールは4つです。
- 入り口はデモ専用の1本だけ。玄関は外に向けない
- 許可リスト方式。窓から見えるのは、見せると決めたアシスタントだけ
- 対象データはこちらで固定。外から「別のサイトのデータを見せて」とは頼めない
- 読み取り専用。書き込みの経路は制限するのではなく、そもそも作らない
窓を狭くするほど、できることは減ります。でもデモに必要なのは「触ってもらって、動くところを見てもらう」ことだけ。それなら窓はこれだけ狭くていい、というのが結論でした。
セキュリティの設計は、「何を守るか」より先に「何をやらないか」を決める作業だと思っています。やらないことが多いほど、守る面積は小さくなる。作らなかった玄関は、破られようがないので。
いま、どこまで来ているか
いまは自分たちのサイトを実験台にして、本物のプラグインをそのまま動かしながら検証しています。自分のサイトの実データで、自分のサイトの上でアシスタントが動く——デモとして、いちばん嘘のない形だと思うので。
外向けの窓は、これから頑丈に作ります。じつは、作る場所ややり方は途中で何度か変わっていて、けっこう盛大に回り道もしました。それでも、窓のルール4つは1つも変わっていません。方針は転んでも、守りの原則は転ばない。そういう順番で決めておいてよかった、と思っています。
まとめ
- 管理画面の玄関は、開けない(鍵は外さない)
- 外に見せる窓は、狭く、1本だけ
- 書き込みは制限するのではなく、そもそも作らない
地味な3行ですが、この3行が先に決まっているおかげで、安心して手を動かせています。
おまけ=窓の向こうに置きたいもの
最後に少しだけ、窓から見せたいものの話を。
アシスタントは、いま公式に配布している4つだけではありません。開発中のものには、期間を選んでグラフを描くものや、サイトの人気ページをランキング形式で発表する「表彰式」みたいなもの——道具というより、ちょっとした出し物のようなアシスタントもいます。台本とデータを差し替えれば、いろんな形が作れる仕組みになっているので、窓の向こうはこれからにぎやかになっていく予定です。
そして、作る側にまわることもできます。9月11日(金)、神戸で「自分専用の WordPress 分析 AI アシスタントをつくりましょうの会」という小さなイベントをやります。前半はみんなで手を動かして自分のアシスタントを作って、後半は食べて飲みながらワイワイ話す会です。「触ってみたい」の先の「作ってみたい」まで来てしまった方は、ぜひ。
