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丸山耕二がWordPressというOSSのためにできること、やっていること

ヒートマッププラグイン「QA Analytics」、UAのデータをバックアップし移行する「Analytics Backup by QA」、自社アクセス解析サービス「QA ZERO」。ウェブジョブズが提供している解析サービスは、すべてWordPressを介しています。

SaaS型のサービスも多い中、なぜWordPressを使うのか?という疑問をお持ちの皆さんも多いと思います。そこで今回は、プロダクトマネージャーの丸山にWordPressに対する想い、これからのことなどを聞いてみました(聞き手:運営堂 森野)。

WordPressとの出会いは2010年 ドキュメントの多さが魅力

森野:まずは、丸山さんとWordPressのかかわりについて聞いていきたいと思います。2023年で、WordPressは20周年ですね。丸山さんが使い始めたのはいつからですか?

丸山:WordPressが出たての頃、MT(Movable Type)が全盛でした。当時はWordPressのサーバーのスペックがそれほど良くなかったため、サイトに用いるのはどうだろうという風潮がありました。

そんな中、2010年くらいにはじめてWordPressの案件が来まして、当時は詳しくなかったため、構築は外部の方に依頼しました。その方の進捗が遅れてしまい、「MTがわかるので、WordPressもたぶんできると思うのですが、手伝いましょうか?」と声をかけたところ、「WordPressを舐めるな、どれだけ苦労して勉強してると思ってるんだ」という具合にすごく怒られたのを覚えています。それをきっかけに、WordPressを学ばないといけないなと思い始めました。

森野:MTはどちらかというと静的HTMLで、カスタマイズをゴリゴリやる感じではなかったですしね。最初の案件以降は、どうされましたか?

丸山:学んでみたところWordPressは良いものだという感覚があったため、定期的に利用し始めました。自社やクライアントのMTで構築したサイトをWordPressでリプレースしたりしていました。

森野:丸山さんが思う、WordPressの良いところとは?

丸山:2016年にMTがバージョン6になり、オープンソース版がリリースされませんでした。それに伴い、必然的に他のものを選ばなければならないという課題もありました。WordPressの良いところは、裏側のテンプレートの作り方がMTよりもはるかにわかりやすく、構築した後のメンテナンス性に優れているところですね。気になっていたサーバーのパフォーマンスも、徐々に改善されていきましたから。

森野:MTの再構築にものすごく時間がかかったりしましたよね。WordPressは拡張性が高いのが特徴ですが、それも理由のひとつですか?

丸山:プラグインの便利さは感じていましたが、当時からプラグインは入れずに必要なら自分たちでやってしまうところはありました。良かったのはドキュメントの多さですね。WordPressのユーザーがどんどん増えていくにつれて情報も増えていったため、自然にWordPressの利用が増えていきました。

森野:エンジニア目線で良いと感じ、それ以来使い続けているというところでしょうか。ユーザーが増えるにつれ、全国各地でWordPressの勉強会や集まりができていきましたが、参加されましたか?

丸山:その頃は、ドキュメントを見てやれる範囲のことをやっていて、悩むことなく自力で解決していました。身近に詳しい知り合いがいたというのもあり、参加には至りませんでした。

WordPressをOSとして3つの解析サービスを開発

森野:2010年頃から継続してWordPressを使ってこられて、アナリティクス関連のプロダクトを作られていますね。ヒートマッププラグイン「QA Analytics」、ユニバーサルアナリティクス(以下、UA)のデータをバックアップし移行する「Analytics Backup by QA」、自社アクセス解析サービス「QA ZERO」、すべてWordPressがベースです。なぜそこまでしてWordPressをというところが気になっています。

丸山:理由は大きくふたつです。QA Analyticsが最初のプロダクトですが、作ろうと思ったのは自分たちが使いたかったから。サイト改善につなげるためのヒートマップ分析ツールはいくつかありますが、良いものはやはり値段も張る。WordPressで構築したサイトも多くなっていたため、自分たちでプラグインを作ってしまえば、便利じゃないかと考えました。

もうひとつの理由は、エンジニア的かもしれませんが、WordPressをもっといろんな人に使ってもらえるようなソフトウェアにしたいという思いからです。WordPressは、エンジニアでなくとも、サーバーにソフトをインストールする際にあまり苦もなくできる、ウェブ業界で唯一とも言って良いソフトかもしれない。それが、世界でこんなにもシェアを獲得している。そこでプラグインを作り、日本製でも良いと認められたら、海外に広がって多くの人に使ってもらえるんじゃないかと考えました。WordPressをウェブサーバー標準のOSのように感じた、というところですかね。

森野:ヒートマップのようなサービスを作ろうとしたら、普通ならWebサービスとして作るのではないかと思うのですが、そうしなかったのはWordPressのOS的なところがメリットだったと。

丸山:少し話がマニアックになりますが、元々、Google アナリティクスだけで取得できるデータには限界があると感じていました。データ量が少ないと、推測できることも少なくなる。もっとデータを貯められたら、もっとたくさんのことがわかるのに、とは常々思っています。しかしながらそれをSaaSでやろうとすると、プライバシーの問題もあり、サーバーコストの問題もあり、データをたくさん貯めようとするほど、0円ではできなくなります。

QA Analyticsのコンセプトは、データに基づくインスピレーションを与えるというもの。たくさんの人に使っていただきつつ、将来的には無料にすることもできるのではという構想も含むと、この方法しかなかったんですよね。

森野:自社サーバーでデータを持つとプライバシーとデータ容量の問題が出てくる。ならばサーバーを別のところにしたいとなると、WordPressが最適だったと。しかしながら、そうしようと思って作れちゃうものなんですかね。

丸山:開発には苦労がありました。前述のようにドキュメントが揃っているため、勉強会には引き続き参加していませんでした。ところが、2019年から開発を始めると、ドキュメントだけではつまずいたんですよね。ユーザーが利用するどのようなスペックのレンタルサーバーであっても処理できるように負荷を軽くすることを考えると、技術的な問題に出くわしまして、それで初めて勉強会に参加しました。そこで知り合いが増えたこと、元々インフラエンジニアだった頃の知識が噛み合って、なんとか作り上げました。

森野:そのようにしてできたQA Analyticsは安定稼働していますよね。ダウンロード数はどれくらいですか?

丸山:現時点(インタビュー時点)で2万3,251ですね。世界中でダウンロードされています。アクティブユーザーは1,000+で、たぶん実感からすると2,000弱程度なんですけど。

森野:すごいですね。ではふたつめの、UAのデータをバックアップし移行する「Analytics Backup by QA」についてうかがいたいと思います。こちらは、どのような経緯でつくられたのですか?

丸山:正式告知前から、UAはいずれサービス停止するだろうと考えていたため、QA Analyticsの設計段階から、Google アナリティクスとデータ構造を似たものにしていました。QA Analyticsの中に、Google アナリティクスのデータを入れることができれば、過去のデータと一緒に見られて良いだろうと。しかしながらユーザーの声を聞くと、WordPressを利用していない企業さんを含め、バックアップ単体ニーズのほうが強かった。そこでQA Analyticsを改造して、バックアップ専用のソフトにして使いやすくしたのがAnalytics Backup by QAです。今では大手企業様にも導入していただいています。

森野:Analytics Backup by QAはWordPressのプラグインで、WordPress以外でも利用できるようにしたのが自社アクセス解析サービス「QA ZERO」ですね。

丸山:QA Analyticsを使ってくださった方から、サイト改善に必要なものだけが入っていて、非常に使いやすいとのお声をいただきました。WordPress以外でも使いたいとの声も寄せられていました。そもそも当初から、自社解析サーバー構築ソフトウェアとして設計していたため、WordPress以外のサイトのデータも取得できるようにする構想はありました。ご要望に応える形で頑張って開発したら2年かかってしまい、ようやくリリースできたというところです。

循環の輪が生まれるような貢献がしたい

森野:ここまでくると丸山さんは、WordPressにおんぶに抱っこの状態と言っても良い。一方で、WordPressのコミュニティはボランティア的なところがあって、使い倒すだけの人はあまり歓迎されていないですよね。丸山さんも今後は、WordPressそのものに対し、何か貢献したいという思いはあるのでしょうか。

丸山:もちろん、あります。「Five for the Future」というWordPressのプログラムがあります。未来のために5%、時間で貢献しようというものです。海外では、たとえばホスティングサービスのソースコードをボランティアでメンテナンスしている人たちがいますから、その思想には共感しています。

WordPressのコミュニティに参加したのは、前述のとおり2019年が皮切りでしたが、僕の好きなタイプの人たちが集まっている印象です。元々は音楽家や小説家で、自分の人生が主軸にある。その上で、皆の役に立てるからとWordPressに貢献しているという。

WordPressの元々のコンセプトは「パブリッシングの民主化」です。たとえばこれまで日が当たらなかったような人たちが、WordPressによってブログを書くことができるようになり、発信力を持ったらおもしろい社会になるのではないかといった思想がある。

森野:たしかに、WordPressをはじめて自分でインストールしてうまくできた時って、感動があるんですよね。カスタマイズしたらできて、おもしろい。そういう感動があって、いろんな人たちが使っているんでしょうね。「Five for the Future」について、ウェブジョブズでは今後、具体的にどのような取り組みをする予定ですか?

丸山:翻訳やプラグインのレビューなどコミュニティにはさまざまなチームがあるため、既存のものに参加することもできるのですが。僕たちは2019年からと遅めの参加でもあり、マーケティング寄りでそれまでコミュニティにいた人たちと毛色が違うからかおもしろがってくれていています。僕の知り合いをWordPressのコミュニティに連れてきたり、その逆も行ったり。新しい世界が広がるような活動がおもしろいと思っています

森野:北海道のコミュニティの方と知り合い、コンテンツ企画をされたと聞きました。

丸山:オープンソースのコミュニティとしてWordPress.orgがありますが、同じ創業者が設立した、​​Automatticという営利団体もあります。​​AutomatticがWordPress.orgに多額の寄付をしたり、スポンサードしたりすることで成り立っているところもあります。北海道で知り合ったのは​​Automatticのベンさんという方で、2月にタイで開催されたWordPressのイベントで知り合い、意気投合しました。

ベンさんから相談されたのは、Automatticが公式としてコンテンツを発信していきたいが、どのようなものが求められているかわからないということでした。たとえば、アフィリエイターさんはWordPressを使っていることが多いため、日本アフィリエイト協議会理事のあびるさんにお願いして、代表の笠井さんをご紹介したところ、ベンさんに気づきが生まれて次々とコンテンツが生まれたといったことがあります。コンテンツ発信の取り組みは日本が初めてのようで、うまくいったら世界の他の国にもフィードバックされると、皆がハッピーになるのかなと思っています。

森野:現時点では、コーディネーターのような役割をされているわけですね。丸山さん自身の発信はまだそれほどされていない?

丸山:プラグインの開発をこんなにガリガリ、マニアックにやっている人もめずらしいということで、プラグインの作り方について発信したら良いんじゃないかと言われています。正直なところ、コミュニティもたくさんあるし、どの活動から始めれば良いのか、自分では絞りきれていないという感じです。手始めに、プラグインのレビューから始めるのが良いのかなと思ってはいますけれど。

森野:丸山さん個人として、ウェブジョブズとして、何かしらの「Five for the Future」の還元は行うし、貢献していることをこれから認知してもらうというところですね。

丸山:はい、僕個人だけでなく、チームのモチベーションあるメンバーにも貢献してもらえるよう、会社の体制を整えていきたいと考えています。WordPressが良いものだというのをもっと知ってもらいたいという気持ちがありますから。

森野:WordPressに対して、もうちょっとこうなったら良いなと思うところはありますか?

丸山:健全なお金儲けができる市場になったら良いなとは思っているんですけどね。WordPress.orgと​​Automatticの2社に分かれているように、営利と非営利のバランスで悩んでいるところではあると思うのですが。

ただ、コミュニティの人たちを見ていると、すごくレベルが高いことをしているんですよね。それが伝わらないのがもったいない。たとえば、エンタープライズのCMSとしてはセキュリティが不安だといった印象でWordPressは避けられがちですが、アメリカのWhite Houseに採用されていたりする。それは、​​Automatticがサービスとして保証をしているからだと思います。そういう循環の輪ができていくと良いと思いますし、エンタープライズの視点から「Five for the Future」がより認知されるような活動をしていくのも良いかもしれないですね。

森野:WordPressとのかかわり、OS的に活用した3つのサービス開発、今後の「Five for the Future」での貢献と、きれいな流れでお話がうかがえたのではないかと思います。本日はありがとうございました!

この記事を書いた人: 森野誠之/運営堂
開発の方向性や広報施策のアドバイザリーとしてQAチームに参画
著書:「未経験・低予算・独学」でホームページリニューアルから始める小さい会社のウェブマーケティング必勝法

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